研究室活動について
卒業研究や特に大学院の研究の進め方について私(東條)の考えを記しておきます.
まず,研究室ではゆるやかなチームに所属しその中で個人の研究テーマについて研究活動を行います. つまり,所属するメンバーは「自主性」と「協調性」の双方が重要視されます. 学部の講義や実験とは全く異なり,数時間考えた程度では解くことのできない研究課題に対してじっくり取り組むことになります.そこではチームを超えたメンバー間の交流や議論は必要不可欠であり,また自分自身で課題に取り組む自主性も無くてはならないものです.
研究活動はよくスポーツに例えられます. オリンピック出場を目指す人,健康増進の為にする人,自分の趣味の為にする人,大した意味もなく仕方なくする人,スポーツは万人に開かれさまざまな取り組み方があると思います.
研究も似たようなところがありますが,大学は教育機関であると同時に研究機関でもあり,意味のない研究を行うことは許されません.研究室メンバーも試合に出て活躍できるよう目標を定めることが期待されます.
ただスポーツと少し異なることは, はじめに力がそれほど備わっていなくても 努力するというプロセスを経て大きな力を培うことができます. 報告・連絡・相談を怠らず努力を続ける人に対しては,
実力が向上するとともにチャンスも多く回ってくることになり, さらに力が付くよいサイクルに入ります. 反対に普段から練習を無断欠席する選手には,
能力が向上しない上に試合出場のチャンスが中々巡ってこない負のサイクルに陥ってしまいます.
もちろん研究活動でもスポーツ選手のようにケガや体調不良などの自分で対処しきれない困難もあるでしょう. この場合もスポーツと同じで個人個人の状況に合わせ,場合によっては時間をかけて休養やリハビリすることも大事だと考えています.それぞれの状況を照らし合わせ,努力している人には惜しまず相談に乗ることも大切にしています.
研究の内容と進め方は, 学科や専攻の違いではなく研究室や研究分野に大きく依存します. ホームランを目指せる研究であるけれど1割以下の打率しかない,とても重要ではあるけど学生の皆さんにとってやや厳しいテーマも世の中に存在しますが, 幸い当研究室のレーザー分光やレーザー冷却分野は「ホームランを目指せる研究」であると共に「5割打者を目指せる研究」と言われる,まだまだ新しい研究分野です. 先輩方が培ってきた研究テーマを礎にして,いろいろな面白い研究成果が毎年のように出てくる状況になってきました.
最後に,作家の井上靖氏は「努力する人は希望を語り,怠ける人は不満を語る」という言葉を残されています.研究教育環境は必ずしも万人に適したものではないかも知れませんが,自分たちで希望を持って道を開く可能性もあります.私もそれが可能な環境を用意し維持できるよう努力し,研究室メンバー各々が希望を語り続けられるよう期待しています.